住宅購入とお金の本
特集9景気急回復!物件価格に早くも影響か!?
2月2日付の日経新聞の一面には、昨年11月から始まった週間ベースの日経平均の終値の連騰が、2月1日の週末までで12週連続との記事が掲載されていたので、記憶されている方も多いと思う。これは、1958年12月から1959年4月まで17週連続上昇という記録である「岩戸景気」以来、過去2番目に長い記録とのことである。
惜しくも、翌週の終値が下落したため、記録更新とはならなかったが、政権交代以後、日本経済に明るい兆しが見え始めた証なのかも知れない。このように、景気が上向くことはありがたいことであるが、景気上昇は住宅価格にも影響があるのである。このことについて、FP住宅相談ネットワークの代表者で1級ファイナンシャルプランニング技能士(CFP)である黒須秀司氏に詳しい解説をお願いすることにしよう。
需給バランス
今、住宅価格を押し上げるであろう需要増の要因は大きく分けて3つあります。
一つ目は消費税増税前の駆け込み需要です。近い将来住宅を持つのであれば、多くの方が増税前に住宅を購入しようと思うのは当然です。こういった方々が今増えている訳です。
二つ目は金利です。これは次の項目で詳しく取り上げますが、景気上昇に伴って住宅ローン金利も上昇するのではという懸念から、金利が上がる前に購入しようという需要です。
三つ目は、建築現場が増え建材等の材料が不足することによる建材価格の上昇や、職人さんの手が足りなくなることによる人件費の上昇という建築費の全般的なコストアップです。現在においても、東日本大震災の復興需要の高まりで、職人さんの手が足りず、人件費は上昇し始めています。これに拍車がかかることになるのです。
どの商品でもそうなのかも知れませんが、特に不動産というものは、需給バランスで大きく価格が上下する代表とも言うべき商品です。近い将来にかけて、前述のよう
な住宅購入者の増加による需要増により、需給バランスに変化が生じ、大きな価格上昇という局面を迎えるのではと思われます。
金利上昇
景気が上向くということは、経済活動が活発になり資金需要が高まるということでもあります。例えば企業が、景気が良い(良くなりそうな)ので、○○の工場を建てようなど、あちこちでこういった話しが出ると、当然金融機関からの借り入れ希望が増加することになる訳です。
このように資金需要が旺盛になり、借り手が増えると銀行が優良企業に貸し出す金利も上昇する訳です。結果、こういったものに連動している住宅ローンの金利も上昇するといった構図です。
一例を挙げると、借り入れ元金3,500万円の住宅ローンを組む場合、現在の標準的な変動金利の貸し出し金利である0. 875% が、仮に1%金利が上昇すると35年間の支払い利息は約710万円増えることになります。これはたいへんな差ですよね。
それでは、借り手としてはこういった状況をどう回避するかです。
これまで長い間、全国的に変動金利型の住宅ローンの選択が多数派でしたが、この様な景気上昇局面においては、固定金利を選択するのも一つの方法かも知れません。
例えば、昨年12月に35年固定金利の代表格であるフラット35の金利が史上最低金利を付けました。1月に若干上昇したものの、それでも過去最低レベルであることに変わりはありません。固定金利は借り入れを起こした月の金利が35年間続くので、現在のような固定性の金利が低い状況で金利をロックすることは充分に考えても良いと思います。但し、長期固定の金利は上昇傾向を示していますので、金利が本格的に上昇する前の早いうちにローンの支払いをスタートさせることがポイントです。
需要減に転じてから買うのが得?
こういった需要の高まりによる価格上昇局面に入ってくると必ず聞こえてくるのが、需要が落ち着いて将来価格がまた下落してきてから購入すれば良いのでは?という購入先送り論です。
ここで冷静に考えて頂きたいことは、現時点において住宅の販売価格を上げ始めた業者はまだほんの一部に過ぎず、他の大半の業者はリーマンショック後、更に申し上げれば、東日本大震災後の相場で値付けをしており、底値相場がまだ継続しているというところです。
これから住宅価格が上がって、その後下がることを待つよりも、現在の底値相場・底値金利を享受するメリットの方が大きいはずです。
家賃でそれなりの負担を抱えているご家庭であれば、より一層そのことが言えます。仮に家賃を月額9万円払っているとすれば、1年間で108万円、3年間で324万円。住宅を購入するまでの間は家賃の支払いというロスが発生し続け、加えて年齢を重ねることにより、繰り上げ返済も重たくなるはずだからです。
購入にお得なタイミング
住宅価格の上昇という、どちらかというと余り有り難くないことにスポットをあてて解説をして参りましたが、この時期、住宅購入には絶好のタイミングでもあるのです。
と申しますのも、住宅の分譲会社の大手は、3月決算という企業が多いのです。そのため、本来であれば需要が高まり、価格を上げても良いタイミングでありながら、
こういった決算時期にあたる企業の商品は、決算対策のためにこの2~3月に値下げをすることが多い訳です。
この春は、今後本格的な価格上昇期に入る前の最後のタイミングかも知れません。これを機会に実際に住宅探しを開始してみてはいかがでしょうか?