例年2、3月は、不動産業界も手持ち在庫の値下げを行うことが多く、お住まい探しの方にとってはとてもラッキーなタイミングです。そして、今年は例年以上にその傾向が強まりそうとの見立てがあります。今回はこの見立てについての特集です。1級ファイナンシャルプランニング技能士(CFP)でFP住宅相談ネットワークの代表である黒須秀司がその事情を詳しく解説致します!
消費税率改定による駆け込み需要との関係
昨年10月、消費税率が8%から10%に改定されました。3%から5%、5%から8%へ改定のときもそうでしたが、過去他の業界と同じように不動産業界も税率引き上げに伴う駆け込み需要が発生してきました。今回も増税前の駆け込み需要を見込んで、新築一戸建て建売り業者さんや土地売り業者さんは例年以上に多くの仕入れを行ったようです。私共FP住宅相談ネットワークグループは、不動産の販売のみを行っている業態ですので不動産の仕入れは行いません。但し、仕入れを行う不動産売主業者さんから当グループに対し、仕入れ予定の不動産や仕入れ直後の不動産について、一般ユーザー様向けの商品に仕上げた場合にいくら位の価格が妥当であるかの〝値付け依頼〟が毎日のように舞い込みます。多い日で1日に5~6現場ほどのボリュームです。そこで、これらが商品化されるまでに一般的に数か月から1年程掛かると仮定し、2017年7月から2018年6月までの1年間と2018年7月から2019年6月までの1年間の件数比較を行いました。そうしたところ、2018年7月以降の1年間の方がその前1年間と比べて値付け依頼件数が13%以上増加していたことが判りました。当時は増税前の駆け込み需要を見越して、それだけ仕入れ意欲が高まっていたのだと思われます。
消費税増税前と増税後
それでは、振り返って昨年10月以前、実際に増税前の駆け込み需要は起こったのでしょうか。結論から申し上げますと発生したと思われます。但し、それは期待していたほどではなく、昨年春先から9月にかけて緩やかな需要増だったように思われます。私なりの分析とお断りさせていただきますが、その要因として今回税率が8%から10%に上がるまでの期間が短かったことや増税幅が2%と小さかったこと、東京オリンピック後に価格が下がるのではという思い込みなどのいくつかの要因が複合的に重なった結果だと考えています。ちなみに東京オリンピックの件に関しては、開催が決定した頃に職人の人件費上昇のあおりで住宅の販売価格が上昇するのではといった観測がありました。当時、基礎工事などの型枠職人は一戸建て住宅の職人と重なるところもあって一部で影響がありましたが、オリンピックの大規模施設の工事は既に終わっており、また、一戸建て住宅と大規模施設の工事では職人が余り重ならないため、オリンピックの影響による価格上昇ということは一戸建て住宅においてはほとんど発生しなかったと感じています。従って、オリンピック後に価格が下がると思っていらっしゃるのであれば、逆にその頃に需要の増加が発生し、供給とのバランスが崩れ、価格上昇の要因になってしまう懸念もあります。
次に昨年10月以降を振り返ってみます。思い出していただきたいのですが、昨年は台風の当り年で9月から10月かけて毎週のように首都圏にも台風が上陸・接近し、残念なことにそれに伴う被害が数多く発生してしまいました。また、週末の土・日に台風が近づいてきた回数が多かったため、主に休日にお住まい探しをされるお客様の動きにも大きな影響を与えました。また、台風による水害やがけ崩れなどの被害が全国さまざまなところで発生したことで、一部地域では河川の近くや傾斜地に面した住宅の販売が鈍ってしまったといった現象もあったようです。
このように消費税増税による駆け込み需要は緩やかで、業界が期待していたほどではなく、駆け込み需要終盤の9月や増税後の10月(業界では毎年この期間を〝秋の繁忙期〟と呼んでいます)に台風による影響を受けたことで、売れるであろうと見込んでいた不動産が数多く売れ残ってしまったというのが昨年から現在に至るまでの状況であろうかと分析しています。
今年2~3月が狙い目と見込まれる理由
毎年この時期になるとパワービルダーと呼ばれる株式を上場している建売り業者さんのお値引きが恒例となっていますが、いつもと異なるここ最近の現象は、地元建売り業者・土地売り業者さんから手元在庫の価格改定やお値引きについての相談を頻繁に受けるようになったことです。これは例年にないことです。また、3月末が会社の決算であることが多く、銀行融資の返済期限が3月末までとなっているケースも多いことから、何とかこの3月末までに手元在庫を減らしたいという点は各社とも共通したご希望です。要は買い手となる一般ユーザーにとっては、思いがけない価格で良質な住宅を手にするチャンスが高まっているということです。合わせて、先月号でもお伝えいたしましたが、昨年10月の消費税率改定に合わせて導入された新制度のうち、「次世代住宅ポイント制度(国から最大35万円相当のポイントがもらえます)」や、父母・祖父母からの住宅取得に対する援助の非課税枠の最大枠の期限がそれぞれ今年3月末までとなっていることも忘れてはいけないところです。
最後に
いつの時代でもマイホームを手にする大切なポイントは、市場の需給バランスがどのように推移しているかを見極めることだと言われています。この需給バランスに注意を払うことで、より上手なマイホーム探しができます。簡単に言えば、多くの人が価格が上昇すると考えるタイミングや安くなると思うタイミングは似通っていて、そのタイミングで一斉にマイホーム探しを開始すれば、あっという間に需要過多・供給不足の市場に変わってしまうことも多く、これは決して上手な家探しとは言えないということです。逆に多くの人があまり注目していないとき、かつ、市場で供給過多になっているタイミングは思いがけない価格で夢のマイホームを手に入れられるチャンスが高まっていると言えようかと思います。
FP住宅相談ネットワーク各社では、この時期特有のお得な情報を数多く取り揃えてお客様のご来場をお待ち申し上げております。是非お気軽にお立ち寄りください。